トラック搭載クレーンの取付は、最初のボルトを締めるずっと前から始まっています。トラックにはクレーンの自重を積んだうえで軸重を法定範囲内に収め、十分な強度のフレームとキャブ後方の長さを確保し、さらに PTO(動力取出装置)でクレーンの油圧を駆動することが求められます。サブフレームへのクレーン取付、配管・配線、試験はそのあとの工程です。シャシーの選定を誤れば、どれほど丁寧に取り付けても取り返しはつきません。
本ガイドでは、まず 3.2 t から 12 t までの現行 BOB-LIFT クレーン 10 機種の技術図面にある実際の数値をもとにシャシー要件を整理し、続いて取付手順を順を追って解説します。クレーンの数値はすべて、BOB-LIFT プロダクトオペレーション部長の Achord Chan が原図から読み取ったものです。計算例は、明記した前提条件に基づいています。
この記事のポイント
- クレーンもトラックも、購入前に適合を確認してください。当社の 3.2 t~12 t クレーンの自重は、作動油、サブフレーム、荷台を除いて 1,350 kg~4,600 kg です。
- キャブ後方に搭載したクレーンは、重量の大半が前軸にかかります。車両総重量だけでなく、前軸の許容荷重も確認してください。
- クレーンごとに、キャブ後方に必要なシャシーの長さが決まっています。下記の図面では 750 mm~1,400 mm です。
- PTO とポンプは、クレーンの作動圧力で定格流量を供給できなければなりません。これらの機種では 20~30 MPa で 25~75 L/min です。
- 最後に作動試験、安定性試験、荷重試験を行い、その記録をクレーンとともに保管してください。
トラック搭載クレーンはどのトラックにも取り付けられますか?
いいえ。トラック搭載クレーン(ローダークレーン、ブームトラッククレーンとも呼ばれます)は多くのメーカーのトラックに取り付けられますが、対象は次の 5 つの条件を満たすシャシーに限られます。クレーンを積めるだけの積載量の余裕があること、搭載位置でクレーンの重量を受けられる軸の許容荷重があること、吊り上げ時の力に耐えるフレーム強度があること、キャブ後方に空いたフレーム長があること、そしてクレーンのポンプを駆動できる PTO があることです。ひとつでも満たさなければ、物理的に載せられたとしても、そのクレーンには適さないトラックです。
下の表は、各クレーンがトラックに求める条件をまとめたものです。数値はすべて当社技術部の寸法図によります。「–」は図面に記載のない項目です。
| 型式 | ブーム | 最大吊り上げ能力 | 自重 | 取付スペース | 油圧流量 | 圧力 | 推奨動力 | 作動油タンク | アウトリガー張出幅 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| SQ3.2ZA4 | ナックル | 3,200 kg | 1,450 kg | 850 mm | 25 L/min | 25 MPa | 14 kW | 60 L | 2,250–3,513 mm |
| SQ3.2SA4 | 伸縮 | 3,200 kg | 1,350 kg | 750 mm | 25 L/min | 20 MPa | 14 kW | 60 L | 1,720–3,120 mm |
| SQ5ZA4 | ナックル | 5,000 kg | 2,386 kg | 1,050 mm | 35 L/min | 28 MPa | 22 kW | 100 L | 2,272–5,122 mm |
| SQ5SA4 | 伸縮 | 5,000 kg | 2,400 kg | 800 mm | 32 L/min | 21 MPa | 18 kW | 100 L | 2,293–5,593 mm |
| SQ8ZA4 | ナックル | 8,000 kg | 3,050 kg | – | 40 L/min | 28 MPa | 25 kW | 160 L | 2,310–5,610 mm |
| SQ8SA4 | 伸縮 | 8,000 kg | 3,600 kg | 1,100 mm | 55 L/min | 26 MPa | 30 kW | 160 L | 2,290–5,990 mm |
| SQ10ZA6 | ナックル | 10,000 kg | 3,700 kg | – | 40 L/min | 30 MPa | 30 kW | 160 L | 2,310–5,610 mm |
| SQ10SA4 | 伸縮 | 10,000 kg | 3,800 kg | 1,100 mm | 63 L/min | 26 MPa | 37 kW | 200 L | 2,290–5,990 mm |
| SQ12ZA4 | ナックル | 12,000 kg | 4,480 kg | 1,400 mm | 55 L/min | 28 MPa | 30 kW | 160 L | 2,316–5,706 mm |
| SQ12SA4 | 伸縮 | 12,000 kg | 4,600 kg | 1,100 mm | 75 L/min | 26 MPa | 45 kW | 200 L | 2,300–7,500 mm |

クレーン搭載に必要なトラックのシャシー要件
次の 5 つの要件を順番に確認してください。最初の 2 つは重量、3 つ目は強度、残りの 2 つはクレーンに必要なスペースと動力に関する項目です。
1. 積載量:クレーンの重量はトラックの積載量から差し引かれる
シャシーに何かを追加すれば、その分だけトラックが積める量は減ります。トラックの車両総重量(GVWR)からキャブ付きシャシーの重量を引き、さらにクレーン、作動油、サブフレーム、荷台の重量を引いてください。残った値が実際の積載量です。
最も重いのはクレーンです。SQ10SA4 10トン伸縮ブーム式クレーンは図面上の自重が 3,800 kg で、一般的な鉱物系作動油は 1 L あたり約 0.87 kg のため、200 L の作動油タンクを満たすとさらに約 175 kg 増えます。サブフレームと荷台の重量は架装内容によって変わるため、推測せずに実測するか、架装メーカーの図面から確認してください。
2. 軸重:総重量だけでなく前軸を確認する
トラック搭載クレーンの多くはキャブの真後ろ、前軸に近い位置に搭載されます。そのためクレーン重量の大半が操舵軸にかかり、総重量が GVWR に十分収まっていても、前軸の許容荷重が最初に上限に達することが少なくありません。
荷重の配分は、単純なてこの原理で求められます。ホイールベースを L、前軸からクレーン重心までの距離を a とすると、前軸にかかる荷重はクレーン重量 × (L − a) ÷ L で、残りが後軸にかかります。
計算例(トラック寸法は仮定値)。自重 3,800 kg の SQ10SA4 を、ホイールベース 4,700 mm の 2 軸トラックに搭載し、クレーン重心が前軸から 1,700 mm 後方にあると仮定します。前軸の荷重は 3,800 × 3,000 ÷ 4,700 ≈ 2,430 kg、後軸は約 1,370 kg です。クレーン重量のほぼ 3 分の 2、約 64% が操舵軸にかかることになります。これにキャブ付きシャシー自体の前軸重量を加え、合計をトラックの銘板に記載された前軸の許容荷重と比べてください。実際に計算する際は、お使いのトラックの実寸を用い、クレーンの重心位置は当社にお問い合わせください。

クレーンを荷台後部に搭載すると重量は後軸に移りますが、空車時に操舵軸の荷重が不足するおそれがあります。トラックメーカーは安全な操舵と制動のために前軸の最低荷重を定めているため、積載時と空車時の両方を確認してください。
この計算は、クレーンとトラックを組み合わせられるかどうかを見るための概算です。クレーン、作動油、サブフレーム、荷台、アウトリガー、燃料、乗員を含めて架装メーカーが行う正式な重量計算の代わりにはなりません。正式な計算は、トラックメーカーの架装要領書と照合し、トラックを登録する国・地域で必要な車両認可も踏まえて確認する必要があります。
3. フレーム強度とサブフレーム
クレーンが吊り上げを行うと、旋回トルクと吊り上げモーメントがクレーンベースとアウトリガーを通じてトラックのフレームに伝わります。上記 10 機種の図面上の定格は 6.8 t·m(SQ3.2ZA4)から 33 t·m(SQ12SA4)です。シャシーのフレームレールは、単体ではこのねじれを受けるようには設計されていません。
サブフレームは、クレーンとシャシーのフレームレールの間に入れる鋼製フレームで、クレーンの荷重をフレーム全体に分散させ、ねじれに対する剛性を高めます。サブフレームが必要かどうか、どの程度の長さと強度が要るかは、クレーンのモーメントとトラックのフレーム断面によって決まります。判断の根拠となるのは、クレーンメーカーの取付図とトラックメーカーの架装要領書の 2 つです。架装要領書には、フレームに穴あけしてよい位置や使用する締結部品も記載されています。原則として、トラックメーカーが認めていない限り、シャシーフレームのフランジへの溶接や穴あけは行わないでください。
4. キャブ後方の取付スペース
クレーンごとに、ベースとアウトリガーボックスを置くための空いたフレーム長が必要です。当社の図面ではこれを取付スペースと呼び、SQ3.2SA4 で 750 mm、SQ5SA4 で 800 mm、8~12 t の伸縮ブーム式で 1,100 mm、記載のあるナックルブーム式で 850 mm~1,400 mm です。キャブ後方の空いたフレーム長を測る際は、キャブチルトのクリアランスのほか、排気装置、燃料タンク、エアタンク、バッテリーボックスも考慮してください。これらは移設が必要になることがよくあります。
クレーンより後ろの部分が荷台長になります。キャブ後方のフレーム長から取付スペースと必要な隙間を差し引けば、架装できる荷台の長さがわかります。

5. PTO と油圧:流量、圧力、動力
クレーンは、トラックの PTO で駆動されるポンプから送られる作動油で動きます。ポンプはクレーンの作動圧力で定格流量を供給し、PTO はそのトルクに耐えなければなりません。当社の図面には、そのための 3 つの数値、つまり油圧流量、システム圧力、推奨動力が記載されています。
推奨動力には余裕分が含まれています。油圧動力(kW)は、圧力(MPa)× 流量(L/min)÷ 60 で求められます。SQ10SA4 では 26 × 63 ÷ 60 ≈ 27 kW の油圧動力に対し、推奨動力は 37 kW です。SQ10ZA6 10トンナックルブーム式クレーンでは 30 × 40 ÷ 60 = 20 kW に対し、推奨動力は 30 kW です。この差はポンプと PTO の損失分を見込んだものなので、PTO は推奨動力に合わせて選定してください。
ポンプのサイズは流量で決まります。流量はポンプ吐出量 × ポンプ回転数です。PTO がポンプを 1,000 rpm で回す場合、SQ10SA4 の 63 L/min には 1 回転あたり約 63 cm³ のポンプが必要で、これにポンプ自体の損失分を少し上乗せします。PTO の変速比やエンジン回転数が変わればこの値も変わるため、当社では適合を確定する前に PTO のデータをお知らせいただいています。
アウトリガーと設置スペース
クレーンの荷重表は、アウトリガーを最大まで張り出し、堅固で水平な地盤に設置していることを前提としています。当社図面の張出幅は、SQ3.2SA4 の格納時約 1.7 m から、SQ12SA4 の最大張出時 7.5 m までです。普段の作業現場にその幅があるか、また荷台や燃料タンクがアウトリガーの脚に干渉しないかを確認してください。荷重表が作成時の設置条件でしか適用されない理由は、当社ガイドクレーン荷重表の読み方で解説しています。
トラック搭載クレーンの取付手順
シャシーの適合が確認できたら、取付は 6 つのステップで進めます。作業は、クレーンメーカーの取付図とトラックメーカーの架装要領書に基づき、資格を持つ架装メーカーまたはクレーン取付業者が行ってください。

ステップ1:クレーンとトラックの適合を確認する
トラックのデータを集めます。メーカーと車種、ホイールベース、GVWR、前軸・後軸の許容荷重、キャブ付きシャシーの各軸重量、フレームレールの断面、キャブ後方の空いたフレーム長、そして選択できる PTO の出力比とトルク定格です。これらとクレーンの数値を使って、前述の積載量と軸重のチェックを行います。数値が合わない場合は、クレーンが届いてからではなく、この段階でクレーンかトラックを見直してください。
ステップ2:シャシーを準備する
取付部周辺を空けます。燃料タンク、エアタンク、バッテリーボックス、排気装置がクレーンベースやアウトリガーの妨げになる場合は、トラックメーカーの移設規定に従って移設してください。フレームに損傷や過去の補修跡がないかも点検します。
ステップ3:サブフレームとクレーンを取り付ける
取付図で指定されたクランプ、ブラケット、シアプレートを使って、サブフレームをシャシーのフレームレールに取り付けます。クレーンの重量に見合った定格の吊り具でクレーンをサブフレーム上に吊り上げ、トラックの中心線に合わせて、指定のボルトを指定トルクで締め付けて固定します。締付トルクは必ず記録に残してください。使用開始後、一定期間が経過した時点でこれらのボルトを再点検する時期が、クレーンの取扱説明書に定められているためです。
ステップ4:PTO、ポンプ、油圧系統を接続する
PTO とポンプを取り付け、吸込み、圧力、戻りの各ラインをクレーンと作動油タンクまで配管します。ホースは排気装置や鋭利な縁から離し、こすれないようクランプで固定してください。クレーンの取扱説明書で指定されたグレードの作動油をタンクに充填し、系統内のエア抜きを行います。
ステップ5:制御装置と安全装置を配線する
キャブ内の PTO スイッチ、クレーンの制御回路、過負荷防止装置、各種表示灯(アウトリガーやブームが格納されていないことを知らせる警告など)を接続します。アウトリガーやブームが格納位置にないときにトラックを走行できなくするインターロック、または少なくともキャブ内の警報装置を取り付け、PTO を接続したままの走行についてはトラックメーカーの規定に従ってください。
ステップ6:試験、検査、記録
旋回、ブームの起伏、伸縮、アウトリガーなど、クレーンのすべての機能を無負荷で作動させます。漏れがないか確認し、安全装置が正しく作動することを確かめてください。そのうえで、準拠する規格とクレーンの取扱説明書が求める安定性試験と荷重試験を実施します。欧州では、ローダークレーンは EN 12999 に基づいて製造・試験されます。英国(グレートブリテン)では、LOLER 1998 第9条により、設置状態が安全性を左右する吊り上げ機器は、設置後かつ初めて使用する前に徹底検査を受けることが義務付けられています。米国では、多関節ブームクレーンは ASME B30.22、トラック搭載の伸縮ブームクレーンは ASME B30.5 の対象となり、OSHA の建設用クレーン規則が適用される場合は、29 CFR 1926.1412(c) により、組立後に有資格者が機器を検査することが求められます。完成したトラックの各軸重量を改めて計量し、重量、締付トルク、試験の記録をクレーンとともに保管してください。
クレーンの作業範囲に一律のルールを当てはめないでください。たとえば、キャブ上方では定格吊り上げ能力の約半分しか吊れない、あるいはトラック後方では常に荷重表どおりの能力が使える、とするガイドもあります。しかし一般的な割合というものはありません。各旋回範囲でどれだけ吊れるかは、そのクレーン、アウトリガーの設置状態、搭載するトラックによって決まります。そのクレーン自体の荷重表と取扱説明書に記載された作業範囲の制限に従い、取付後の安定性試験で確認してください。
トラック搭載クレーンは、垂直方向の吊り上げ用に作られています。ナックルブーム式クレーンの強みとして横荷重への対応を挙げ、荷の引きずりをその例とする資料もあります。荷を引きずったり横方向に引いたりすると、荷重表では想定されていない力がブーム、旋回装置、トラックのフレームにかかります。クレーンの取扱説明書で明確に認められていない限り、こうした作業は行わないでください。
BOB-LIFT が出荷前に確認していること
当社は納入前に徐州の工場でクレーンを試験しており、製品ページではその試験の様子を動画でご覧いただけます。お問い合わせフォームでは、トラックをすでにお持ちかどうか、またトラックの車種とシャシー仕様をお尋ねしています。その情報をもとに、積載量、取付スペース、PTO の流量と圧力をクレーンの図面と照合し、お見積りの際に適合を確定します。数値が合わない場合は、ご注文の前にお知らせします。
よくあるご質問
トラック搭載クレーンは積載量をどれくらい使いますか?
クレーンの自重に、作動油、サブフレーム、荷台の改造分を加えた重量です。当社の図面では、自重は 3.2 t の SQ3.2SA4 で 1,350 kg、12 t の SQ12SA4 で 4,600 kg です。200 L の作動油タンクを満たすと、さらに約 175 kg 加わります。
トラッククレーンには必ずサブフレームが必要ですか?
このクラスのクレーンでは、ほぼすべてに必要です。シャシーのフレームレールだけでは、クレーンの吊り上げモーメントと旋回トルクに耐えるようには作られていないためです。サブフレームの寸法は、クレーンメーカーの取付図とトラックメーカーの架装要領書で決まります。軽量化のために省略しないでください。
クレーンはトラックのどこに搭載すべきですか?
最も一般的なのはキャブ後方です。荷台を広く使え、クレーンが荷台全体に届きますが、前軸に荷重がかかります。後部搭載では後軸に荷重がかかり、トラックの後方から荷役する作業に向いています。搭載位置は、軸重の計算結果と荷下ろしの方法から決めてください。
トラッククレーンにはどのような PTO が必要ですか?
クレーンの作動圧力で定格流量を出せるポンプを、余裕をもって駆動できる PTO です。当社の図面では、SQ3.2SA4 の 20 MPa で 25 L/min、推奨動力 14 kW から、SQ12SA4 の 26 MPa で 75 L/min、推奨動力 45 kW までです。
クレーンを自分で取り付けることはできますか?
適切な吊り上げ機器と取付資料を備えた、資格を持つ取付業者である場合に限られます。締結、油圧、安定性に関するミスは荷重がかかったときに表面化し、そのときが最も危険です。多くのお客様は地元の架装メーカーにクレーンの取付を依頼しており、法令で必要な場合は登録や検査の手続きも任せています。
クレーン取付チェックリスト
- クレーン、作動油、サブフレーム、荷台を差し引いた積載量が、運ぶ荷物に対して十分である。
- 前軸・後軸の荷重が、積載時も空車時も許容荷重内に収まっている。
- サブフレームが、クレーンの取付図とトラックの架装要領書に従って設計されている。
- キャブ後方の空いたフレーム長が、クレーンの取付スペースを満たしている。
- PTO とポンプが定格流量と圧力を供給し、推奨動力を確保している。
- 普段の現場でアウトリガーを最大まで張り出せる。
- 作動試験、安定性試験、荷重試験を実施・記録し、軸重を再計量した。
各機種の主な図面数値は、当社のトラック搭載クレーン製品一覧にある各製品ページに掲載しています。お使いのトラックに合うブームタイプを比較するには、当社ガイドナックルブーム式と伸縮ブーム式トラッククレーンの比較をご覧ください。トラックのデータをお送りいただければ、適合をご一緒に確認します。
